向島のカフェ

2014.8.24 Sun

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前回のコラムの向島の床屋のそばに「カド」という
生ジュースと胡桃パンのカフェがある。
角にあるから「カド」という名前なのだと思う。

古びた外観に惹かれて撮影の休憩がてら入ってみた。
店内は外観とはうって変わって
壁には油絵が並び、天井にはシャンデリアが飾られ
生ジュースと胡桃パンとは不釣り合いな程クラシックな雰囲気だった。
カウンターで帽子をかぶったひと癖ありそうなマスターが本を読んでいた。

何を頼もうか迷っているとマスターが生ジュースの種類と
胡桃パンのサンドイッチのメニューを
早口で一気にしゃべるのだがすぐには理解できない。

錆美子は活性ジュースという妙な名前のジュースを
僕はコーヒーを注文。


▲活性ジュース

とっつきにくい感じのマスターだったが
そのちょっと浮世離れした空間に魅せられて
撮影をしてもいいかと聞いたら「どうぞ」と言うので
店内で錆美子を撮影させてもらった。

先日、今度は向島で脚の撮影をした時に再びこの店を訪れた。
今度は僕も活性ジュースとサンドイッチを注文した。
活性ジュースとは数種類の野菜をミックスした生ジュースだが
セロリの臭みが嫌でなければ結構美味い。
そして2階の釜で焼いているという胡桃パンのサンドイッチも美味しかった。

一見神経質そうに見えるマスターと話してみたら意外と話し好き。
床屋と同様ここも2代目。
マスターが子どもの頃は回りに料亭がいっぱいあって
ここはそこへ行く伊達男たちの待ち合わせ場所として使われていたと説明してくれた。
その当時の店の雰囲気をなるべく自分の手で残しているらしいが
実際には結構大変らしい。
油絵は年に1回は交換し、テーブルと天井に描かれた薔薇は
全てマスター自らの手描きでなかなか味わいがある。
服飾の仕事を目指していたというインテリなマスターだが根は下町育ちである。
カウンターの端に置いてある業務用のミシンで何でも作るという。


▲手描きのテーブルの薔薇

ここはスカイツリーの地元ではあるが、スカイツリーが出来ても客は増えないという。
むしろスカイツリーが嫌いな客が多いという。
僕もそのひとりである。そして勿論マスターも嫌いなようだ。
実は地元はメディアが紹介しているほど、スカイツリーを歓迎している人ばかりではないと言う。
確かにこんな下町にあんな鉄塔の化け物を建てるというセンスは無粋だ。
回りの環境とのギャップにやはり相当な違和感を感じる。


▲聳え立つスカイツリー

帰りにスカイツリーにある「ソラマチ」というショッピングエリアを覗いてみた。
そこには六本木のミッドタウンやヒルズと似たような空間があった。
経済の活性化は大事ではあるが、
こんな下町まで六本木と同じにするセンスは粋ではない。

しかし、この店のマスターの話を聞くと昔のままを残すのは実際は大変だと思う。
経済との戦いでもある。
粋な下町は残してほしいとは思うが、そういう思いとは関係なく
現実の向島は刻々と変化している。
せめて写真で残すぐらいなら僕にでも出来る。