向島の床屋

2014.8.14 Thu

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先日、女優の伊澤さんと時々やっている
「錆美子」と僕たちが呼んでいる撮影で墨田区向島に行って来た。

向島は最近ではスカイツリーの地元として話題になるが
僕は落語に出てくる場所として興味があった。
今年の始めに浅草経由で散策してみて
錆美子となら相性がいい町だと思っていた。

車で浅草を過ぎて適当に走ったところで大通りから脇道へ。
曲がってすぐに、青いペンキが剥がれかけたちょっとただならぬ床屋を見つけた。
床屋にしては異色な外観だ。
かなり朽ちた外観だったがまだ営業はしているようだった。
その前で錆美子を撮影しようと思って車を停めた。
しかし、こういう下町は筋を通さないと怒鳴られるから
事前に撮ることを了解してもらおうと恐る恐るドアを開けて中を覗いてみた。


店主らしい親爺と近所のおばさん(だと思う)が古いソファに座って歓談中。
店の前で写真を撮りたいのですが、と言ったら
親爺は快く承諾してくれた。
一瞬店内を見回してみたが、その何とも言えない
混沌とした古さに魅力を感じて店の中でも撮らしてほしいと
お願いしたらこちらも了承してくれた。

親爺は2代目で、先代から引き継いだとのことだが
先代が絵を描くのが好きだったらしく、
絵を描いていた小さな机と椅子をそのままにしていた。
使わなくなった錆びたはさみもそのまま。
それ以外にも店のほとんどが昔のまま。
先代が作ったという粘土細工のフィギアスケーターまでそのまま飾ってある。

JAZZが好きらしく店内にはCDが積み上げられ
古いラジカセが置いてある。
自宅ではレコードを聴いていると言っていた。

錆美子を撮りながらそんな雑然とした店内を少しスナップした。

店主の親爺の話を聞いているとそのいい加減さに思わず笑ってしまう。
親爺そのものが昔のままだった。
余白のなくなった今の時代、その「ゆるさ」がいい。
東京でこんないい加減な床屋が存在しつづけていることがうれしかった。
でも親爺には悪いが自分の頭はやってもらいたいとは思わない。

「この辺りは昔花街だったから床屋が多いんだよ。
でももう少ししたらみんななくなっちゃうだろうな〜」と親爺は言った。

そんなわけで今度はこの床屋を撮りに行こうと思う。


▲昔のままの換気扇。


▲剥がれたタイルもそのままだが、褪せた色がいい。